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So, Coffee?

COLUMN

COFFEE MEETS CULTURE 
コーヒーが印象的な本。

Dec 08.2021

人と人との間にコーヒーがある。

本を読むとき、そばにいてほしいのがコーヒー。読んでいる本にコーヒーが登場したら、ちょっぴりうれしくなるかもしれない。今回、コーヒーのシーンが印象的な5冊を、カフェを併設する、神楽坂で人気の新刊書店『かもめブックス』のバイヤー・前田隆紀さんに選んでもらった。

まず前田さんが選んだのは、詩集『女たちへのいたみうた』。作者・金子光晴が、友人で詩人の山之内獏と過ごす喫茶店での他愛もない時間を、幸福感を込めて綴る【(二人がのんだコーヒー茶碗が)】。前田さんは、「コーヒーは、『人生について、詩について』、延々と会話が続くような時間を生み出してくれるのかもしれません」と語る。

85編を収めた随筆集『珈琲挽き』の著書・小沼丹は、ユーモアと哀愁を漂わせる作風で知られる。表題作【珈琲挽き】は、フランス土産にコーヒー挽きをもらったことをきっかけにコーヒーを飲む習慣ができた主人公が、コーヒーを通じて遠い過去の記憶と「たわむれる」さまが描かれる。

珠玉のコーヒーエッセイ31編を収録した『こぽこぽ、珈琲』は生活に溶け込むコーヒーの魅力やコーヒーへの想いが、よしもとばなな(現在、吉本ばなな)や村上春樹などの作家・エッセイストによって、リズミカルに美しく描き出されている。

『芝生の復讐』は、リチャード・ブローディガンが手がけた、1960~70年代の空気感を伝える短編集。“ときには人生は、ただコーヒー、それがどれほどのものであれ、一杯のコーヒーがもたらす親しさの問題だということもある”から始まる【コーヒー】という作品は、思い続ける女性と時間を共有するために、幾度となくコーヒーを口実に使う。

アメリカの小説家・ノンフィクション作家として知られるニコルソン・ベイカーによる小説『ひと箱のマッチ』。主人公の男は毎日、日が昇る前の暗闇の中でコーヒーを淹れ、暖炉に火をつける……。日記風の不思議な文体ながら、コーヒーが日常に結びついていることをしみじみと感じさせてくれる一冊だ。「コーヒーを淹れる時間と世界が動き出す時間とが重なり、またその習慣化によってコーヒーを淹れること自体が妻とのコミュニケーションツールにもなっています」と前田さんは言う。

そして最後に前田さんは、「コーヒーは、喉の渇きをいやすだけではなく、時間・空間・コミュニケーションを生み出してくれます。だから、『かもめブックス』にも、カフェを併設しているんです」と話してくれた。やはり、本のかたわらには、コーヒーがふさわしいといえるだろう。

『女たちへのいたみうた』著者:金子光晴(集英社文庫)
自由を愛した反骨の詩人、金子光晴。愛と孤独を見つめ、生きることの尊さを謳った詩集。

『珈琲挽き』著者:小沼丹(講談社文芸文庫)
移ろいゆく心象風景のなかに、人生のドラマを明るく描いた随筆集。

『こぽこぽ、珈琲』編者:杉田淳子・武藤正人/著者:泉麻人・寺田寅彦ほか(河出書房新社)
上記のほかにも村上春樹や湊かなえなど、31人の作家が執筆したコーヒーにまつわるエッセイを収録。

『芝生の復讐』著者:リチャード・ブローディガン/訳者:藤本和子(新潮文庫)アメリカ・ワシントン州生まれの作家による、詩的情緒が漂う、世界中で人気の短編集。

『ひと箱のマッチ』著者:ニコルソン・ベイカー/訳者:パリジェン聖絵(近代文藝社)
小説『中二階』『室温』で顕微鏡的描写を見せたニューヨーク生まれの著者による、日記風に綴られた小説。

教えてくれた人

前田隆紀さん

1981年生まれ、栃木県出身。神楽坂のcafeを併設する新刊書店『かもめブックス』バイヤー、店員。詩人やDJとしても活動している。

●かもめブックス
併設するカフェでバリスタが手がけるコーヒーも本格派。本好き、コーヒー好きの人におすすめしたい人気店。

住:東京都新宿区矢来町123 第一矢来ビル1F
電:03-5228-5490
営:11:00 ~ 21:00
休 水曜日(祝日の場合は営業)
http://kamomebooks.jp/

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