COFFEE MEETS CULTURE
コーヒーが主題の絵画。
カフェやコーヒーをモチーフとした絵画は多い。今回は UCC の神戸本社ロビー、コーヒー博物館などに展示されている「カップから農園まで」を描いたコーヒー絵画を紹介。
コーヒーが主題の絵画が描くアートと文化の関係
コーヒーと絵画の関わりは深く、時をさかのぼれば17~18世紀のイギリスのコーヒーハウスをモチーフにした作品にたどり着く。全盛期は19世紀後半~20世紀前半。「芸術の都」パリに滞在した画家たちは、カフェを溜まり場として互いに刺激しあいながら新しい潮流を生み出していった。有名無名の画家たちの作品の中に、彼らが日々、長い時間を過ごした贔屓のカフェや、常に傍らにあったコーヒーを見ることができる。
代表的なものは、1888年にフィンセント・ファン・ゴッホが描いた『夜のカフェテラス』やパブロ・ピカソが青の時代に描いた『ソレルの肖像』、ロートレックの『朝食をとるロートレックの母』。アメリカに目を転じれば、エドワード・ホッパーが、カフェダイナーとコーヒーをモチーフにして描いた名作『ナイトホークス(夜ふかしする人々)』や『オートマット』などがある。
こうしたコーヒー絵画の数々は、美術としての魅力だけではなく、生活の中でコーヒーがどのように親しまれてきたかを知る上でも欠かせない貴重なものだ。
UCCの神戸本社ロビーや隣接するコーヒー博物館などにも、日本人画家が描いた多くのコーヒー絵画が展示されている。イタリアやフランスの伝統的なカフェでの飲用シーン、ジャマイカやブラジルなどコーヒー生産国の収穫風景など「カップから農園まで」のあらゆる側面が描かれ、コーヒーの魅力が楽しめる。
今回、紹介している5作品は、カフェでの飲用シーンから収穫風景などを網羅したものであり、コーヒー絵画の多様性を見ることができる。
街角のカフェの椅子に座ってコーヒーを楽しんでいる時、ふと壁に飾られた絵に目がとまり、一瞬、日常を忘れてその作品に引き込まれてしまいそうになる。絵の中で飲まれているのはどんな香りのコーヒーだろう。コーヒー農園ではどんな風が吹くのだろう。それを飲みながら登場人物は何を思っているのだろうと想像をふくらませることで、目の前にある現実の一杯を、より味わい深く感じることができるようになる。コーヒーを味わう時にコーヒー絵画があることで、コーヒーの楽しみ方が広がっていく。
《画家プロフィール》
斎藤民雄(さいとうたみお)
1972年オーストリア国立ウィーン応用美術大学に留学。音楽が趣味で、プロの画家になってからも、「モーツァルト紀行」や「ハイドン紀行」など音楽に関連する作品を多く残した。
樋口善造(ひぐちぜんぞう)
東京芸術大学油絵科卒業。1983年から約10年にわたり、ドイツに滞在。帰国後は、日本国内を写生して回ったり、後進の指導にあたる。現在は故郷の福岡県八女市在住。
中嶋岩雄(なかじまいわお)
ブラジルを中心に、日 本、 欧 米( ニ ューヨーク、ミラノ、スイスなど)でも精力的に個展を開催。ブラジルの文化功労賞にあたる「グランクルス賞」など数々の賞を受賞している。2011年没。