UCC ひと粒と、世界に、愛を

So, Coffee?

FEATURE
二拠点生活とコーヒー
#03
#03

マキタスポーツ

芸人・ミュージシャン・文筆家・俳優

家族の希望で始まった二拠点生活。
オルタナティブな暮らし方を目指して。

多様な肩書を持つマキタスポーツさんが、故郷・山梨に新しい拠点を構えたのはこの春のこと。ただ、本人は二拠点生活を送ることになるとは考えてもなかったそうだ。新しい暮らしを始めて1ヶ月ほど、新拠点にはまだ数回しか滞在していないとのことだが、早速生活に変化はあった様子で。その暮らしぶりを覗くべく、2種のコーヒーを手土産に、山梨県の山間部ののどかな場所にある新拠点にお邪魔した。
Jul.31.2023

MAKITA SPORTS

photography:Osamu Matsuo
interview & text:Ku Ishikawa
edit:Shigeru Nakagawa
produce:Yuki Tadano(MAGAZINEHOUSE CREATIVE STUDIO)

ご用意したコーヒーは、テイストが異なる2種のカフェインレス。それを慣れた手つきで一杯ずつ愛用のマグカップに落とす。ちなみにこのカップは、プチ鹿島さん、サンキュータツオさんとともにMCを務めるラジオ番組『東京ポッド許可局』(TBSラジオ)のオリジナル。
窓際に腰掛けてのんびりブレイクタイム。窓を開け、ウグイスのさえずりや、川のせせらぎを聞きながら、コーヒーを飲んでいると、まるで古民家カフェにいるような気分になるそうだ。「コーヒーの飲み比べは面白いですね。僕はコク深めのタイプが好きでしたね、音楽で言えば低音が効いてる感じで」

現代文明から距離を置いたピュア度がある

— もともと二拠点生活を考えていらっしゃったのですか?

いやあ、それが全く考えていませんでした。この場所に初めて来たのは、そもそもマネージャーの友人が役場で働いているっていう縁があって、「良いところだから案内しますよ」と言われ、昨年の夏に旅行で訪れて。僕は山梨出身ですけど、この辺りは全く馴染みがなくて、市町村名を聞いたことがあるくらい。ちょっと観光して「のんびりしてて良いとこだなあ」と思いつつ、帰ろうとしていたんですけど、妻が「ここ最高じゃない?」なんて感化されて。そのときはまさか自分が二拠点生活を始めるとは思いもしませんでしたね。

— 滞在中に、なにか契機になるようなことはあったんですか?

役場に勤める方とご飯をご一緒する機会があり、街のセールストークを色々と聞かせてもらったんですけど(笑)、先生に対して生徒数が少ないから教育が手厚そうだなという印象はありました。僕と妻は、小学校に通う子供たちの教育を気にしていたので、その部分は確かに良さそうだなとは思いました。でも、スーパーもコンビニも遠くて、僕は全然リアリティを感じられなかった。

— 一番近いコンビニまでは車で1時間ほどと聞きました。

そうそう、本当に何もないんですよ。去年滞在したときは、釣りしたり、散策したり、温泉に入ったりとのんびり過ごしまして。よく言えば、それだけピュア度は高いですよ。現代文明からちょっと離れていると言いますか。妻は東京生まれで『北の国から』の世界観に憧れていたから、そういう環境に惹かれたそうです。一方、僕は小さい頃から見渡すと山だらけ。別に山村に住んでいたわけじゃないですけど、常に山に囲まれていてね。田舎育ちだから、今も変わらず都会が大好きなんですよ。

コンビニが楽しいのは、生活が安定しているからこそ

— まだ二拠点生活を始めて1ヶ月ほどとのことですが、生活に変化はありますか?

僕と上の子供2人が東京に住んで、妻と下の子供2人が山梨に移住という、あまり聞きなれないケースですよね。妻がいなくなって、下の子供もいなくなって、やっぱり東京の家は静かですね。静かってことに、残された3人はソワソワしています。

あとは、ご飯の問題。3人がいなくなって早々は、「今日は面倒臭いから、外食とかコンビニで」っていうのも新鮮で楽しかったですけど、コンビニはあっという間に飽きましたね。コンビニで買ったものを家で開封するときの詫びしさってなんなんでしょうね(笑)。もともと僕はコンビニの棚をチェックするのが大好きで、妻が東京にいたときは、「新しい商品が出てないか?」とか「今、売れ筋はこれか?」なんて買って食べるのが好きでしたけど、今はしたくなくなっちゃいました。安定した生活があるのに、コンビニに行くっていうゆとりが良かったんでしょうね。あれほど便利なものもないし、すごいなとは相変わらず思いますけど。

— 山梨のご家族の暮らしぶりはどうなんでしょうね。

妻は楽しそうに暮らしていますよ(笑)。下の子供たちの変化は正直まだ見えていないですけど、「ここで暮らすしかない」って感覚があるんじゃないかな。だから僕は、都会からやってくるお父さんとして、都会の空気を吸わせてあげたいなと思っています。今週末は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を観せようと思ってまして。でも映画館にも車で行くしかないわけです。なので、学校終わりに連れ出して、ちょっと彼らに都会を味わわせてね。子供は生まれも育ちも東京ですから、そういうことも必要かなと思うんですね。

— お気に入りの場所はありますか?

緑に囲まれている状態から、急に見晴らしがよくなる川沿いのスポットがあるんです。滞在しているときは、毎朝見に行きますけど、毎回目まいがしますね。突然抜けが良くなると、自然の広がりと奥行きを全身で感じることができるんです。自宅周辺の川付近はクラッとするくらい良いロケーションが点在していて、すごく気に入っていますね。友人が来たらBBQをしたり、のんびり釣りをしたり、川が起点にあるような気がします。

あとは、水汲み。この場所ならではの体験ですよね。「水汲むのかい!」ってね。ここは東京の水源地だそうで、せっかくなら沢の水を……と妻は毎日汲みに行っていますよ。

地の利を生かしたサウナができたらいいなって

— 先ほど「ちょっと現代文明から離れた……」とおっしゃっていましたが、そういった場所に拠点を構えるとなると、地域住民の方との軋轢みたいなこともあるんじゃないかと心配になってしまうのですが……。

いや、全然ないですね。街自体が移住者にもウェルカムな感じがあります。ビジネスを目的に若い人たちが移住してくる例も結構多くて、ダートロードのサイクリングコースを作りたいとか、川が綺麗だからテントサウナをやりたいとか、放置されている空き家を買い取って販売する不動産業を興したりとか。地域住民と手を取り合って、街を良くしていこうという機運がありますから。他にも、クラフトジンをつくったり、鹿などのジビエを加工する工場を運営したり、場所に根付いた事業がリアルに動いている感じは新鮮ですね。

— ご自身で事業を興す展望はありますか?

今のとこないですけど、ないものしかないので。例えばラーメン食べたいなと思っても、ラーメン屋がないんですよ。だからラーメン屋を作ったら、ツーリング客も多いから、食べてってくれるんじゃない?とか淡い皮算用はあります(笑)。

— マキタスポーツさんがラーメン屋の店主だったら、それは相当話題になると思います(笑)。

でも、僕の一番の興味はサウナですかね。地の利である水を生かして。実際サウナのイベントをやってらっしゃる先人たちがいるんですよ。そういう人たちと協力しながら、なにか僕のアイデアとか、僕のわずかながらな発信力をうまく組み合わせながらできたらなって。

難しいのは、地元の人にちょっと話を聞くと、人が来て街が賑わってくれるのは嬉しいって言うんだけど、あんまり人が来て荒らされても嫌だと思うわけで。だから、ほどほどの付き合い方と、アピールの仕方っていうのは考えないとなって思いますね。サウナって点で考えてみても、差別化がすごいじゃないですか。でもだからこそ、よりピュアなところで、天然水を求める人は多いと思うんですよ。そういう人たちにとっては良いと思うけれど、ここが魅力的なスポットだとバレちゃうと、よからぬ人が来る未来もあり得るかもしれない。まあ、ここまで来るのは物理的に大変ですけどね。

— こんなサウナを作ってみたい、というモデルはあるのですか?

佐賀に「オクチル」っていう、秘湯ならぬ秘サウナがありまして。そこにとある雑誌の取材で連れて行ってもらったんですけど、そこの水風呂は沢の水を引いていて、シングル(10℃未満の水風呂のこと)。素晴らしかったですね。そこのマスターは、地元の人に資材を提供してもらって、ゆっくりと小屋みたいなものをいくつか作ってるらしいんですね。そういうふうに地元の人と歩幅を合せた展開が良いなと思っていますね。

— 二拠点生活における今後の展望を教えてください。

自分としては別荘を持った感覚で、二拠点のオルタナティブな生活を最大限楽しみましょうというマインドです。幸いにして、僕は物を書いたりする仕事もしているので、Wi-Fiさえあれば、原稿のやり取りはできます。俳優の仕事でいえば、ちょっと違った環境のなかに身を置いて、ゆったりとした時間のなかで台本を覚えてみたりするのは良いんじゃないかってね。

音楽制作にも良いかもしれないですよね。作る音楽の感じは変わっちゃうかもしれないけど(笑)。ヒーリングとかにあんまり興味はないから、まだ手は動かないですけど、テクノとかは良いのかなと。フィールドレコーディングも面白そうですしね。

もうひとつの側面として、お笑い芸人がありますが、芸人としてはここにいたらダメだろうなって思いますね。もっと欲望渦巻く汚ねえとこにいないとダメですよ。じゃないと感性は鈍る気がします(笑)。

本日のコーヒー
(左)UCC

おいしいカフェインレスコーヒー
ワンドリップコーヒー 8杯分

(右)UCC

おいしいカフェインレスコーヒー
ワンドリップコーヒー コク深め 8杯分

「15時以降はカフェインを取らないように気をつけているので、カフェインレスでこんなに美味しいものがあるのは嬉しい発見です」とマキタスポーツさん。左/フルーティーな香りが鼻に抜け、飲み口は爽やか。右/“コク深め”の名の通り、カフェインレスにもかかわらず、しっかりとしたコクが感じられる。ミルクで割っても美味しい。

二拠点生活が始まってから、娘がコーヒーを淹れてくれる

— 普段からコーヒーは飲まれますか?

飲みますね。でも45歳くらいまでは、あんまり得意じゃなかったんです。めちゃくちゃコーヒーが似合う面してるのに(笑)。味もへったくれもなく、気付け薬みたいにガブガブ飲んでたんです。そんなの好きになるわけないですよね。

でもあるときを境に、突然コーヒーが美味しいって思い始めて。今はもっぱら、ちょっとした時間があるとき、ブレイクタイムに飲みます。そこで飲むのが一番美味しいですね。味はブルーマウンテンのような、酸味が強くないものが良いかな。昔の喫茶店であるようなね。

— どういうシーンで飲まれるんでしょう?

色々とモードもあって、いっときは子供を幼稚園に送った帰りに喫茶店でゆっくりする習慣があって、そういうところで、コーヒーを飲む朝なんて良いなあとか思ったり。あとは、午後イチくらいに、おやつをつまみながら、妻とコーヒーを飲んだりね。

最近で言うと、長女と一緒にコーヒーを飲んだりしていますね。朝起きてテレビや新聞、ネットニュースなんかを見ていると、彼女がコーヒー淹れてくれてね。それは二拠点生活を始めてからの、嬉しい変化かもしれませんね。

マキタスポーツ

芸人・ミュージシャン・
文筆家・俳優
まきたすぽーつ|1970年、山梨県生まれ。音楽と笑いを融合させた「オトネタ」を提唱。各地で精力的にライブ活動を行う。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』(扶桑社)、『雌伏三十年』(文藝春秋)など。俳優としては2012年に公開された作品『苦役列車』(山下敦弘監督)をきっかけに、第55回ブルーリボン賞新人賞、第22回東スポ映画大賞新人賞を受賞。
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