3.コーヒーと運動のダブル効果でダイエット !
前ページの「2」で、コーヒーを飲むことでカフェインを摂ると、アドレナリンが分泌されることを述べましたが、これは、ダイエットにとって絶好の条件を整えてくれます。 アドレナリンは脂肪細胞を刺激し、体脂肪が、脂肪酸とグリセロールに分解されるきっかけを作ります。そして体脂肪が分解されている間に運動すると、血液中に漂い出した脂肪酸は、筋肉の細胞に取り込まれエネルギーとして使われていきます。つまりコーヒーを飲むことで体脂肪の分解が進み、さらに運動の効果で、効率的にエネルギーへと消費されていくわけです。とりたてて激しい運動は必要ありません。並んで歩く人と会話ができ、軽く汗ばみ、少し息が上がる程度のウォーキングなど有酸素運動を20~30分、週3回ほどで効果が見られるでしょう。
さらに、長期にわたるカフェインの効果を見るため、次のよ うな実験を行いました。下の図は、肥満・糖尿病モデルラットの CT 記録ですが、カフェインと運動を処方すると、驚いたこと に実験開始5週目では内臓脂肪が60%、皮下脂肪も46% 減っていました(CTの左側参照)。毛細血管がたくさん入り込んだ 内臓脂肪が減るのは予想されたことでしたが、そうではない皮下脂肪まで激減するとはびっくり。また、運動はせず、カフェインだけ与えたラットも内臓脂肪は37%、皮下脂肪も41% 減 っていました(CTの右側参照)。 皮下脂肪のつき具合は見た目に影響するので、高いダイエッ ト効果が期待できます。
▼図 ラットの脂肪量の CT 記録
運動嫌いの方はまずコーヒーを飲むことから始めて、少し体が軽く感じられるようになったら、できる範囲の運動を取り入れてみてはいかがでしょうか? なお、コーヒーで摂ったカフェインが血中で半減するまでには4~5時間ほどかかります。つまり、飲んだ後、大慌てで運動をしなくても間に合うということ。コーヒー摂取後、数時間 内の適度な運動を心がけてみてください。
4. 腎臓をいたわるのにも、コーヒーが有益?
実はカフェインと運動の組み合わせは、腎臓にも良いことが実証されています。下のグラフは、糖尿病性腎症のモデルラット(※2)で行った実験結果ですが、カフェインを与えた群と、さらに運動もさせた群は、尿中アルブミン排泄量(尿中に出たタンパク質の量)が大きく下がっていることが一目瞭然です。
腎臓機能が弱まっていると、本来持っているフィルター効果が弱くなり、尿中にタンパク質が出てしまうことから、尿中アルブミン排泄量で腎臓の健康度合いが判断できます。つまり実験により、カフェインと運動の働きによって、腎臓機能が正常に近づいたと考えられます。よく調べてみると、カフェインと運動の働きにより、モデルラットの腎臓を流れる血液の量が増えていることから、腎臓の機能が活発になっていることが推測されました。加えて糸球体 (腎臓にある毛細血管の塊で、フィルター効果を司る場所)の基 底膜(表皮と真皮が接している部位)もすっかり薄くなっていました。これは、糸球体へのストレス(内圧)が大幅に軽くなったことを意味しており、よってカフェインと運動は、腎臓のケアにも大きく役立っていると考えられます。
一杯のコーヒーと運動を日常に取り入れることで、腎臓に優しい生活をめざせます。ただし、コーヒーは嗜好品。続けざまに何杯も飲むことは避け、ゆっくりと味わったあと、できる範囲の適度な運動を心がけましょう。それが、コーヒーとともに健康維持を実現する、最善の道と言えるでしょう。
(※2)ヒトに例えると腎症前期。まだ腎症が顕在化していない(試験紙による尿タンパクが1+ 以上に達していない)時期で、運動療法の対象になっている。
▼グラフ 糖尿病性腎症のラットの尿中アルブミン排泄量の変化
*何も処置しないと尿中アルブミン排泄量 が倍近く増加するラットに、運動を実施してもほぼ変化はないが、カフェイン添加で減少(腎症悪化阻止)、運動とカフェイン併用なら正常ラットと同等まで尿中へのアルブミンの排泄が抑制されました。
鈴木政登先生
東京慈恵会医科大学客員教授、医学博士。1975 年東京教育大学大学院修士課程修了。76年東京慈恵会医科大学臨床検査医学助手、2006年教授、13年定年退職。15年に一般社団法人日本体力医学会理事長就任。