[Health&Beauty]
コーヒーを毎日3~4杯楽しむ習慣は、
健康長寿をもたらす!?
1 肝臓癌予防のためにコーヒーを飲もう
癌の種類によってコーヒーの効果に差がある
1995年から1998年にかけて8万人以上の男女を対象として行われたJPHC Study(多目的コホート研究)[※1] という有名な調査があります。その結果、コーヒーを飲む習慣は全死亡リスク、および心疾患をはじめ、脳血管疾患や呼吸器疾患のリスクを下げることが判明しましたが、残念ながら癌との顕著な関係は確認できませんでした。
それが今年、国立がん研究センターの発表によると、コーヒーを1日3~4杯飲む習慣は、肝臓癌に対する予防効果がほぼ確実で、女性の大腸癌や子宮体癌の発症を抑えている可能性も考えられるというのです。
こうした研究は諸外国でも活発に行われていて、日本人より多くの癌でコーヒーの予防効果が認められています。有名な報告ですが、ウィーン大学のベロニカ・ソマザ博士によると、深炒りコーヒーは抗酸化性が強く、かつ胃酸分泌を抑え腸の運動を改善するので、それらが消化器癌の抑制につながるということです。他の癌にも効果的だという調査結果もあるので、今後研究が進めば新たな事実が判明するかもしれません。
[※1]JPHC Study(多目的コホート研究)…Japan Public Health Center-based Prospective Studyの略。特定の地域や集団に属する人々(コホート)を対象に一定期間追跡する疫学調査。ある要因を抱えている集団とそうでない集団を比較して、要因と特定の疾患との関係を調べるのが目的。
2 コーヒーを飲んで生活習慣病の予防を
コーヒーこそが百薬の長 !?
肥満が生活習慣病の温床であるのはご存じでしょう。中年太りの丸いお腹を形作るのは主に内臓脂肪。手足やわき腹に多い皮下脂肪と違って、増え過ぎた内臓脂肪はさまざまな物質(アディポサイトカイン[※2]など)を分泌しますが、そのほとんどは体内に慢性炎症の状態を引き起こし、糖尿病をはじめとする各種生活習慣病の呼び水となることがわかってきました。
内臓脂肪が生み出す物質のうち、数少ない善玉がアディポネクチンというもの。慶應義塾大学百寿総合研究センターの新井康通医師が100歳以上の高齢者800人以上を調査したところ、その血中には他の年代よりもアディポネクチン[※3]が多く存在することが判明しました。これがただちに“アディポネクチンが多いと長生きできる”ということにはつながりませんが、健康管理において重要なファクターになっていると考えて差し支えないでしょう。
そして、コーヒーを飲んでいると、このアディポネクチンが増えるらしいのです。アディポネクチンが増えると、悪玉のアディポサイトカイン、TNF-α(腫瘍壊死因子 )[※4]の働きを妨げ、メタボリックシンドローム[※5]の予防に役立ちます。であれば、結果的に健康長寿につながりそうです!
\OKA’S VOICE/
肥満を予防するにもコーヒーが効果的。健康と同時に理想的なスタイルも手に入るかも。
[※2]アディポサイトカイン/アディポネクチン…肥満が進んで主に小腸周辺に蓄積する内臓脂肪、あるいは心臓、腎臓など本来脂肪が蓄積しないはずの場所に付着してしまった異所性脂肪などが生み出す生理活性物質。その多くは悪玉で、臓器に慢性炎症を引き起こし、機能不全から生活習慣病の一因となる。数少ない善玉がアディポネクチン。
[※3]慢性炎症…ケガや細菌感染、アレルギー反応などによって起こる急性炎症がいずれ治癒するのに対して、自覚症状に乏しく、持続的に進行するのが慢性炎症。肥満が過度に進み、悪玉アディポサイトカインの量が増してくると、循環器系を中心に慢性的な炎症状態になってしまう。
[※4]TNF- α(腫瘍壊死因子)…Tumor Necrosis Factorの略。少量でも大きな影響を発揮する生理活性物質(サイトカイン)で、免疫細胞の一つ、マクロファージ(貪食細胞)が生み出すと考えられてきたが、近年の研究によって、半分以上が肥大化した脂肪組織で作られることがわかってきた。
[※5]メタボリックシンドローム…エネルギーとして使いきれない過剰な脂肪は、インスリンホル モンの働きで、脂肪組織(特に内臓脂肪)に蓄えられる。腹囲が 男性は85cmを、女性は90cmを超えて高血圧、高血糖、脂質 代謝異常のうち二つに該当すればこの診断が下る。
岡 希太郎(おかきたろう)先生
東京薬科大学名誉教授、東京大学薬学博士、日本コーヒー文化学会理事。著書に『珈琲一杯の薬理学』(医薬経済社)、『毎日コーヒーを飲みなさい。』(集英社)、『漫画・珈琲一杯の元気』(医薬経済社)ほか。