忙しい時こそ、
どんなコミュニケーションを取るべき?
〜おもてなしの極意〜
第8 回S1サーバーグランプリ優勝者・小谷忍さんが、おもてなしの極意を伝授します!
お客様に合図を出し続けることが大事
ーーまず、接客で大事なポイントをお聞かせください。
小谷:平常時も繁忙時もまず、第一印象がとても重要です。最初の数秒間の第一印象が良ければ、何事も好印象で受け取っていただけますが、悪ければ何事もマイナスでとらえられてしまうんです。例えば、食べ終わった食器を下げた時、第一印象が良ければ「気の利いた子ね」となりますが、悪ければ「食べ終わった途端に下げて、急かされているみたい」となってしまいます。
ーー第一印象アップのポイントは?
小谷:笑顔と爽やかな挨拶は基本中の基本です。そこに2秒ほどお客様の目を見て受け答えする(アイコンタクト)ことで、笑顔もより生きてきます。本となる姿勢や身だしなみ、言葉遣いはもちろんですが、店舗全体を見渡して、その場に応じた雰囲気を意識することも大事ですね。特に忙しいお昼時はハキハキと受け答えし、夕方など場合によってはゆったりとやわらかい間合いで接客しています。
ーー忙しい時だからこそ、大事にしたいことは何ですか?
小谷:例えば、受け答えの声が小さすぎると「本当に伝わっているのかな」といった不安を与えてしまいますので、しっかり通る声で接客しています。忙しい時は特にはっきりとわかりやすいトーンを意識します。そして忙しい時ほど、きちんとお店を回すことが大事です。そのためのひとつとして、〝状況を口に出すこと〞を意識しています。なかなかオーダーが出てこない時、スタッフ間で「○番のオーダーは通ってますか?」「もうすぐできます」など、はっきりと声がけができていれば間違いを防げますし、お客様と直接会話していなくても、やり取りが伝われば安心していただけます。直接的にも間接的にもお客様に合図を出し続けることが大切なコミュニケーションになると思っています。
新人時代は失敗の連続。今は後輩を励ます存在に
ーーどんな新人時代でしたか?
小谷:お客様となかなかコミュニケーションが取れなくて、失敗もすごく多かったです。落ち込んだ時、先輩たちがポンッと背中を叩いてくれることがあって。言葉がなくても、その励ましで頑張れました。
ーー失敗から得た気づきは何ですか?
小谷:現場でご意見をいただくことも多く、誠心誠意、対応させていただいているつもりでも伝わらないことがあります。これまでで一番大きなクレームがあった時に気づいたのが〝言葉遣い〞でした。単に「少々お待ちくださいませ」と言うより、「少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか」といった依頼型に変えれば、納得してお待ちいただけます。さらに、「ただ今、お席をご用意致しますので」と、状況説明の言葉をつければより丁寧で、接客側の誠意もより伝わるのではないかと思って日々、実践しています。
ーーサーバーグランプリ(毎年行われている、日本一の「ベストサーバー」を選ぶ大会)出場の感想は?
小谷:大会では、クレームの解決だけでなく、クレームから次につなげることを念頭に置いて臨みました。その場しのぎの対処ではなく、「また会いたい」と思っていただける接客をしようと。大会だから特別に良く見せようとせず、いつもの店舗にいるつもりで接客したんです。すべては現場で得た経験が生かせた結果ですので、店舗のみんなで獲れた賞だと思っています。
ーー〝接客〞の魅力とは?
小谷:今でも毎朝、「今日も失敗なく、お客様に喜んでいただけますように」と願って出勤しています。店舗の状況は日々、違いますし、100点満点の日ってないんですよね。日々進化して、生きていることを実感できるのが魅力的です。接客を始めて7年目。これからも自分にできることを尽くして頑張りたいと思います。
\小谷流おもてなし三か条/
一 . 身だしなみなどで好印象を心がける
笑顔とアイコンタクトでの受け答えはもちろん、身だしなみも大事。自分のためのおしゃれとは違い、飲食を扱う接客業として清潔感ある身だしなみを。強すぎる柔軟剤の香りなどにも、小谷さんは気を配っている。
二 .的確に状況を把握し落ち着いて対応する
混雑時ほど焦らずに、何が求められているか落ち着いて接客。手元の作業に集中していると、姿勢も前かがみになりがち。視界も狭くなって失敗も起こりやすいので「前を向いて」とスタッフ同士で声をかけ合う。
三 .お客様の身になって心づくしの接客を
ウェイティングなどの場合、お客様に選択してもらえるように「お待ちいただいてもよろしいでしょうか」と依頼型の言葉遣いを。さまざまな要望にもできる限り手を尽くして、気持ちの良い接客を心がける。
小谷忍さん
UCCカフェメルカード ジェイアール京都伊勢丹店パートナー
利用客だったのをきっかけに、UCCカフェメルカードジェイアール京都伊勢丹店へ。最初の頃は失敗の連続だ ったが、経験と試行錯誤を重ねてスキルアップし、第8回S1サーバーグランプリ全国大会優勝という成績を収める。現在も同店でイキイキと接客中。