UCC ひと粒と、世界に、愛を

コーヒーのある風景。
荻上直子さんインタビュー。

Dec 01.2021

『かもめ食堂』『トイレット』など数々の話題作を手がけてきた映画監督の荻上直子さん。コーヒーを偏愛する彼女のコーヒー歴から、映画撮影時の逸話、現在の楽しみ方までを伺いました。

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毎朝コーヒーを飲まないと、何もできません。

萩上さんが最初にコーヒーを飲んだ記憶は遠く、幼少の頃にさかのぼる。

「両親が飲んでいたインスタントコーヒーをいつも少しだけもらって、そこに牛乳をなみなみと入れて飲んでいたのが始まりです。今になって思うと、コーヒーを飲ませるには幼すぎる年齢なんですけど……。だから小学生のときにはもう、ちゃんとしたコーヒーを飲んでました。といってもインスタントですけど(笑)」

そんな筋金入りのコーヒー好きが高校時代、大学、そして留学先のアメリカへと続く。

「ちょうど『かもめ食堂』にも出てくるような、本屋さんとカフェが一緒になったお店があって、そこに素敵なお兄さんがいたんです。アメリカ人と日本人のハーフでカッコよくて……そのお兄さんに会いたいがために毎日通ってました。そのとき初めてデザインカプチーノというものに触れたような気もします」

映画『かもめ食堂』ではいくつかコーヒーが登場するシーンがある。中でも謎のフィンランド人男性が食堂に現れ〝コピ・ルアック〞とおまじないをするシーンは多くの人の印象に残った。

「公開直後はよく〝私もコピ・ルアックって唱えています〞という映画ファンの方から報告をいただいたんですが、あれは全くの創作で効果のほどは明らかじゃないんです(笑)。でもそう言っていただけるのは嬉しかったですし、〝つまり愛情を入れるってことなんです〞ってお答えしていました。あと、これは後から知ったことなのですが、フィンランドって国民ひとりあたりのコーヒーの消費量が世界2位らしいんです。だからコーヒーのシーンがたくさん出てくることに対して、現地のスタッフや役者さんがすんなり受け入れてくれたのも、そういう土壌があったからなんだなと思います」

おいしそうなコーヒーのシーンだが、撮影するのはなかなか大変だったようで……。

「コーヒーって抽出するのに時間がかかるじゃないですか。撮り始めるまでそのことに気づいていなくて。最初から淹れているっていうのを見せながら、いかに素早くテーブルへ出すところにつなげるかということに苦労しました。あとはテストしているうちにコーヒーがどんどん冷めてしまうので、本番のときにフレッシュなものをタイミングよく用意する、というところも大変でした。やっぱりちゃんとあったかいコーヒーじゃないと、おいしい画が撮れないので」

もちろん今もコーヒーは欠かせない存在。毎朝、起きるとまず豆を挽き、1日分のコーヒーを淹れる。

「コーヒーがないと何もできないんです。まずは朝ごはんのトーストとともに1杯、食後にもう1杯。そこから仕事をしながらちびちびと午後まで飲み続けます。お気に入りの豆はフレンチローストかエスプレッソ用など深炒りで濃いもの。そこにちゃんと脂肪分のある牛乳を入れてラテにして飲んでいます。あとは外で脚本のアイデアを練ることも多く、長時間滞在するのでおかわりのできるカフェや喫茶店を選びます」

旅行中など、たまにコーヒーが飲めないことがあると、頭の中がコーヒーでいっぱいになってしまうという荻上さん。

「それほどコーヒーは私にとって必要不可欠なものなんです」

イッタラ社のムーミンマグカップを収集している。「これは特にお気に入りのものですが、自宅の棚に30個近くディスプレイしています」
荻上さんが監督・脚本を務めた映『かもめ食堂』での1シーン。主人公のサチエがハンドドリップで丁寧にコーヒーを淹れていく姿が描かれる。 ©️2005 かもめ紹介/photo 髙橋ヨーコ

 

荻上直子(おぎがみ なおこ)監督
1972年千葉県生まれ。千葉大学卒業後、米国の大学院映画学科で映画製作を学び、2000年に帰国後映画製作を始める。主な作品として『かもめ食堂』(2006)、『めがね』(2007)、『トイレット』(2010)などがある。

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