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ウィーンの伝統料理、美味探求。

Dec 11.2021

ハプスブルク帝国の都ウィーンの食文化は、ボヘミア(現在のチェコ)、ハンガリー、ドイツ、イタリア、バルカン半島など領地の伝統料理を取り込み、さらには新大陸からの食材も積極的に取り入れてきたため、実に多彩である。

中でも、代表的といわれるのが、牛肉と野菜のブイヨン煮込み「Tafelspitz(ターフェルシュビッツ)」だ。牛ランプ肉の塊を弱火で2時間ほど茹でてから、たっぷりの野菜を加えてさらに30分ほど煮、最後の10分は輪切りにした骨髄を加える。できあがったら、スライスした肉と野菜をスープごと銅鍋で提供するのが専門店『Plachutta (プラフッタ)』のオリジナルスタイル。食べるときはまず野菜の旨味たっぷりのスープを味わう。次にとろとろになった骨髄を塗ったパン、そして肉にりんごとホースラディッシュのソースやシブレット入りのマヨネーズを添えて。付け合わせは炒めたじゃがいも、ほうれん草のクリーム煮が定番。元はマリア・テレジアの時代に、年老いて痩せた牛を美味しく食べるために考え出された料理で、後に皇帝フランツ・ヨーゼフが好んだことから広く知られるようになったという。

『Plachutta (プラフッタ)』の「Tafelspitz(ターフェルシュピッツ)」。

◎Plachutta  https://www.plachutta-wollzeile.at

 

ハンガリーの影響を受けた料理では、「Gulaschグーラッシュ)」が有名だ。牛肉をじゃがいもやトマトなどと煮込み、パプリカの風味を効かせた煮込みである。ハンガリーの農民が、屋外で大鍋を火にかけて肉や野菜を煮たのがグーラッシュの始まり。ウィーンではスープとして、または具材の多いシチューとして、あるいは目玉焼きやソーセージ、団子などを加えて農家風と呼ぶボリューム満点の一皿に仕立てることもある。『Zum Schwarzen Kameel(ツム・シュヴァルツェン・カメール)』のやわらかい仔牛を使ったグーラッシュは、牛肉以外の野菜はなめらかなソース状。アイアーノッケル(卵入りの緩い生地を湯に落として茹でたもの)とサワークリームをたっぷり混ぜて味わう。

『Zum Schwarzen Kameel(ツム・シュヴァルツェン・カメール)』の「Kalb-Rahm-Gulasch(仔牛のクリームグーラッシュ)」。

◎Zum Schwarzen Kameel   https://www.kameel.at

 

野菜だけで仕立てた、ベジタリアンやビーガン向けの「Gulaschグーラッシュ)」もある。『Zum Schwarzen Kameel  (カフェ・シュヴァルツェンベルク)』のビーガン・グーラッシュは、牛肉とラードを使わず、植物油で素材を炒め、じゃがいもを主役にして、フレッシュな黄や赤のパプリカの角切りを最後にプラス。トッピングのハーブ、マジョラムの爽やかな香りで食欲を誘う。

『Zum Schwarzen Kameel  (カフェ・シュヴァルツェンベルク)』の「Veganes Erdäpfel Gulasch(ビーガン・ポテト・グーラッシュ)」。

◎Zum Schwarzen Kameel  https://www.kameel.at

 

もう一つ、ウィーン料理として有名なのが、「Schnitzel(シュニッツェル)」。叩いて薄く伸ばした仔牛肉や豚肉に衣をつけて揚げたフライだが、ウィーン風といえば一般的に仔牛肉のそれを指す。レストランやバイスル(居酒屋)、そしてカフェでもメニューに乗せているところが多く、最もポピュラーなウィーン料理である。

『Figlmüller(フィグルミュラー)』の「Wiener Schnitzel(ウィナーシュニッツェル)」。

◎Figlmüller https://figlmueller.at

 

さまざまな食文化とハプスブルク帝国の宮廷文化が育んだバラエティの豊かなウィーンの伝統料理。一皿の背景にある歴史や人々の知恵と工夫を思いながら味わうのも楽しい。

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