豊かな風土と異国の影響より発展した、
ベトナムの多彩な食文化と悠久の歴史。
Dec 08.2021
ベトナムの歴史は古く、文明国家としての始まりは、約2000年前ともいわれている。その後、中国からの1000年にわたる支配を経てベトナム王朝を成立。しかし再び、60年に及ぶフランスの統治時代が訪れる。さらに日本による進駐、フランスとのインドシナ戦争、そしてアメリカとの約20年にわたるベトナム戦争など、長く苦難の歴史を歩んできた。このような複雑なベトナムの歴史は、食文化にも大きな影響を与えている。
特に、中国とフランス。箸や茶碗を使い、米を主食とすることや、ベトナム料理には欠かせない調味料の「ニョクマム(魚醬)」は中国の流れといわれる。一方、フランス統治時代には、南部で大規模なプランテーションが進められ、コショウなどのスパイス、洋野菜、コーヒーの栽培が行われ、現在のベトナムの食文化にはなくてはならないものになっている。日常的にパンを食べ、コーヒーを飲む習慣も、フランス統治時代の名残が定着したものだ。
長い歴史のなかで、さまざまな異国とかかわりながら、世界三大料理のうちの二国である中国とフランスから大きな影響を受け、さらに自国のベトナム料理と融合。
特徴は、ハノイを中心とした北部、宮廷料理のフエで知られる中部、ホーチミンの位置する南部など、地方ごとに食材や味付けが異なること。南北に長いベトナムは地域ごとに気候も異なるため、調理法もさまざまだが、「五味(塩味、酸味、辛味、甘味、コク味)、五彩(黒、赤、青、白、黄)、二香(香り、香ばしさ)」を一貫して大切にしていることである。
歴史の重みと多様な文化の融合が、他に類を見ない食文化として独自に発展してきたのがベトナムの食文化だ。