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So, Coffee?

FEATURE
01
REUNION :
A Volcanic Island

レユニオン島、
幻のコーヒー復活物語

インド洋に浮かぶフランスの海外県、レユニオン島。かつてフランスのブルボン朝時代にルイ15世をはじめ多くの偉人たちを虜(とりこ)にした伝説のコーヒーが存在した。一度は歴史から姿を消したコーヒー、ブルボンポワントゥを現代に蘇らせたのは、UCCとレユニオン島、フランス本国の人々の情熱だった。
Dec 06.2021
伝説を伝説で終わらせないために、レユニオン島の幻のコーヒーに情熱を注ぐ人々。
伝説のコーヒーを
探し求めて。
ブルボンポワントゥはレユニオン島にかつて存在していたコーヒーの名前で、あまたあるコーヒーとは一線を画す珍しい個性を持っていることで知られていた。「ポワントゥ」とはフランス語で「尖(とが)った」を意味し、木の形も葉も、豆までも、すべて尖った形をしていたことから命名されたといわれる。当時、存在していたコーヒーにはない特徴だった。
「この島にはかつてフランスの王侯貴族に愛されたコーヒーがあるはず」という、伝説のコーヒーの存在を信じ続けた日本とレユニオン島の人々の熱い想いは、ブルボンポワントゥらしきコーヒーの木の発見をもたらした。伝説のコーヒーが60年の時を経て、日の目を見た瞬間だ。その情熱はフランス本国にも伝播し、日仏の国境を超えてブルボンポワントゥの復活プロジェクトをともに進めることを約束。そこから、絶滅したと思われていたブルボンポワントゥの再生と復活へ向けての長い道のりがスタートした。
伝説を伝説で終わらせないために、レユニオン島の幻のコーヒーに情熱を注ぐ人々。
2000本から4本へ。
復活プロジェクトを始めるにあたり、まず取り掛かったのがブルボンポワントゥの品種の確定だった。ブルボンポワントゥ復活プロジェクトは、いつしか島中に知れ渡ることとなっていた。そのため島の至る所からブルボンポワントゥと思しき木の情報が寄せられ、その数は約2000本にも及ぶことに。その中からブルボンポワントゥの外見の特徴に合致したものを一本ずつ見極めて、なんとか250本まで選りすぐった。そこからは内面的特徴である“低カフェイン”をもとに厳選。ブルボンポワントゥのカフェイン含有量は通常のアラビカ種の約半分ということがわかっていたのだ。その特性を持ち合わせていた木を選出しさらに味わいや香りの吟味を重ね、最終的に4本の木を“マザーツリー”と定めた。
ブルボンポワントゥの収穫期は7月~翌年2月にかけて。
7年の歳月をかけて
伝説が復活。
2003年、87農園107の区画で栽培をスタート。しかし、開始2年で20近い農家が手を引いてしまうほど、生育は困難を極めた。品種の個性や品質の良さも群を抜いていたが、栽培の難しさも想像を超えていたのだ。それを何とかつなぎ止めようと、現地指導を行ったのがUCC農事調査室のスタッフ。日本との往復を繰り返し、4年目にとうとう収穫できる環境が整った。しかし最後の関門として焙煎が立ちはだかる。ブルボンポワントゥの豆は密度が高くて堅いため、焙煎しても膨らまず均等に焼くのを困難なものにしていた。やっと納得いく焙煎ができた時、驚くほど甘い香りが立ち上がった。口にすると、今まで飲んだことのない甘く澄んだ味わいが広がり、後から爽やかな酸味が広がったのだ。 「今まで飲んだどんなコーヒーとも違う香りと味わいだ」誰もが、そのピュアなコーヒーとの出合いに感動した。絶滅しかけた品種を手探りで復活させた7年目、伝説のコーヒーが目を覚ました瞬間だった。
ブルボンポワントゥの開花時期は例年2~4月。
これからも続く伝説。
2007年の発売以来、ブルボンポワントゥは成功を収め続けている。しかし、さらなる品質の向上、栽培の工夫、島の産業としての定着など、取り組むべき課題はまだ多い。品質向上の取り組みの一環として2009年に新たな研究が始まった。熟度による成分の違いを知るために、赤外線センサーを使いコーヒーチェリーのスペクトル(波形)を実証し、最適な収穫のタイミングを判断しようという試みなど、最先端のコーヒー栽培技術を採用している。UCCのスタッフをはじめ、ブルボンポワントゥの復活に携わったすべての人々は「コーヒー人生をすべてかける価値のあるコーヒーだ」と言う。そんな熱き想いがこもったコーヒーの物語はこれからも続いていくだろう。
ブルボンポワントゥはどんなコーヒー?
ブルボンポワントゥは、ブルボン品種から生まれた突然変異種。300年前と変わることのない個性を宿したまま現代に蘇り、限りなく原種に近いと言われている。一般のコーヒー豆と比べ尖った形をしており、カフェイン含有量は半分ほど。甘さの指標であるジアセチルを2倍含有する。澄み切ったクリアな味わいで、柑橘系を思わせる軽やかな酸味と甘味が楽しめる。
口にした誰もが驚くほどの澄み切ったクリアな味わいで、渋味はなく自然が育んだ低カフェインコーヒーの透明感と気品にあふれている。少し遅れて口の中に広がる甘味を含んだ酸味も印象的。しかも、冷めてもなお、おいしいのがブルボンポワントゥの大きな魅力。コーヒーの新しい世界を教えてくれること間違いなし。
香り
ブルボンポワントゥのアロマは「香りのブーケ」とも称されるほど、フルーティな甘い香り。まるで、名もない野の花を集めたような繊細でピュアな香りを秘めている。焙煎直後はあまり香りが立たないが、粉砕すると大きく香る。ドリップする時、カップに注ぐ時、そして味わいながら。最後はカップに残る香りまで楽しみたい。
高品質を維持するための取り組み
ブルボンポワントゥの年間収穫量はわずか約1トン。UCCでは、コーヒーチェリーの色の測定とカッピング評価をし、A九と認定されたものを輸入し製品化。貴重なブルボンポワントゥをさらに厳選した極上品だけが日本の消費者に届けられている。
約30の農家により、熱心な栽培管理が行われている。
レユニオン島でのカッピングは、フレンチプレスで抽出する。
カッピング評価を経て、3つの投球に格付けされる。
ブルボンポワントゥこぼれ話
UCCホールディングス株式会社・代表取締役会長の上島達司氏が、2016年12月5日にフランス共和国から「農事功労章シュヴァリエ」を受章した。これはフランス農産物の対外輸出や外国市場での販売促進などに功績のあった者に授与される勲章。「ブルボンポワントゥ」復活がフランスのコーヒー文化の普及に貢献したと評価されたものだ。
フランス共和国農業・農産加工業・林業省のカトリーヌ=ジェラン・ラネエル局長(左)から「農事功労章シュヴァリエ」を授与される上島達司氏(右)。
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